東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2757号・昭52年(ネ)546号 判決
そこで進んで考えるに、≪証拠≫を総合すれば、昭和二八年一〇月本件各土地の固定資産税の滞納により本件各土地を差押え公売に付する旨の通知が控訴人方に舞込み、事の意外に驚いた控訴人が、右の旨をきくに通知したところ、まもなく、きくが、本件各土地の西村からきくへの登記済権利証を持って、控訴人方を訪れ、控訴人の妻岡博子に対し、「亨さん(控訴人)のものなのに、すみませんでした」と述べて、右権利証を差出したので、岡博子は、きくの右言辞を当然のこととして了承し、右権利証を受領し、控訴人において右滞納にかかる金額を支払って差押の解除を受け、その後引続き本件各土地の公租公課を支払ってきたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そして、右認定の事実によれば、控訴人は、従来使用貸借により本件各土地を占有していたのであるが、右権利証の授受に際し、岡博子が控訴人に代り、きくが、今後は控訴人の所有であるとしてよいとの趣旨を述べたのを受けて、本件各土地は控訴人の所有である旨をきくに対し表明したものと解することができるから、控訴人の占有は、この時から自主占有となったものというべきである。
(杉田 松岡 中村)